読書感想

デボラ・クロンビー『警視の因縁』(講談社文庫)

幼子を預けたまま、妻が蒸発した。行方を探す弁護士の夫も姿を消し、後日、他殺体で発見された。女性警部補・ジェマは、遺児シャーロットの面倒を見つつ、婚約者のキンケイド警視と共に、惨劇の真相に迫る。ロンドンを舞台に解きほぐされる、奇怪な人間模様…

デボラ・クロンビー『警視の偽装』(講談社文庫)

ロンドンの有名オークションハウスに出品された、見事なジュエリー。それは、エリカの父の形見だった。エリカは機知の女性警部ジェマ・ジェイムズに相談をする。その聞き込み取材の直後、オークションに関係した若い女性が轢死した。 (講談社:http://bookcl…

ジャック・カーリイ『髑髏の檻』(文春文庫)

ジャック・カーリイ『髑髏の檻』(文春文庫)読了。今回も期待に違わず面白かった。カーソンシリーズは猟奇殺人もので幼児虐待ものだったりして本筋はかなりハードなんだけどそれを押さえたうえでユーモラスな語り口で爽快感があるのが好き。やりすぎ感やおば…

ジーン・ウルフ『ピース』(国書刊行会)

ジーン・ウルフ『ピース』(国書刊行会)をだいぶ前に読了しておりました。最初のほうはウルフだしSFだよねと思って読んだので仮想空間のなかの話だとずっと思って読んでたけど、途中で時代的にそんなわけないわとSFで読もうとする脳を方向転換しました(^^…

スティーブン・キング『リーシーの物語』上下(文春文庫)

スティーブン・キング『リーシーの物語』ようやく読了。行く着くとこまで行ってしまった物語という感じね。初読の時よりはかなり面白く読んだけどやはりちょい苦手系。痛みがダイレクトすぎるのか。キング独特の愛の物語というのは今回よくわかった。『シャ…

米澤穂信『満願』(新潮社)

6つの物語が入った短編集。どれもさりげなく視点をずらしていく手法のミステリでどこか奇妙な味わい。各編すべて雰囲気が違うのが面白い。『儚い羊たちの祝宴』のインパクトやイヤさ加減が絶妙ゆえの爽快感はなく、そこから人の業を描くとこに一歩進もうと…

ピエール・ルメートル『その女アレックス』(文春文庫)

おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭…

上橋菜穂子『精霊の守り人』(新潮文庫)

老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。(新潮社:http://www.shinchosha.co.jp/book/…

スチュアート・ウッズ『警察署長』上下(ハヤカワHM文庫)

1920年冬、ジョージア州の田舎町デラノの郊外で若者の全裸死体が発見された。就任間もない初代警察署長ウィル・ヘンリー・リーは、秘密結社K・K・Kの犯行と見て捜査を開始する。だが、検視の結果判明したのは、死体が警察関係者の手によって尋問された形跡が…

ガブリエル ガルシア=マルケス『族長の秋』(集英社文庫)

架空の小国に君臨している大統領は、街道筋の娼婦を母に生まれた孤児であった。若くして軍隊に入ると、上官を裏切り、あくどい手段で昇進をかさねて今日の座についた。年齢は150歳とも250歳ともいわれ不詳。絶対的権力を持つ大統領の奇行、かずかずの悪業、…

近藤史恵『胡蝶殺し』(小学館)

市川萩太郎は、蘇芳屋を率いる歌舞伎役者。花田屋の中村竜胆の急逝に伴い、その息子、秋司の後見人になる。同学年の自分の息子・俊介よりも秋司に才能を感じた萩太郎は、ふたりの初共演「重の井子別れ」で、三吉役を秋司に、台詞の少ない調姫(しらべひめ)…

ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』(角川文庫)

ヨーロッパの辺境、トランシルヴァニアの山中。暗雲をいただきそびえる荒れ果てた城があった。主の名は、ドラキュラ伯爵。彼は闇に紛れ血を求める吸血鬼だった―。辺境での雌伏の時を経て、血に飢えた伯爵は大都市ロンドンへの上陸をもくろむ。ドラキュラに狙…

キジ・ジョンスン『霧に橋を架ける』(東京海外SF叢書)

2つの月が浮かぶ世界で、危険な“霧”の河に長大な橋を架けようとする人々の苦闘と絆を描くヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作(表題作)消失と再出現を繰り返す不思議な猿たちのサーカスと共に旅を続ける女性が出会う人生の奇跡を描く世界幻想文学大賞受賞作(…

ミネット・ウォルターズ『養鶏場の殺人/火口箱』(創元推理文庫)

ミネット・ウォルターズ『養鶏場の殺人/火口箱』読了。あまり本を読まない人、ミステリを読まない人向けに「読みやすく」書かれた作品ということでウォルターズにしては読むやすい設定。とはいえ人の救いがたい暗部の感情を緻密に描き出す手法は健在。中編だ…

クリストファー・プリースト『夢幻諸島から』(早川書房)

クリストファー・プリースト『夢幻諸島から』(早川書房)読了。途中からどんどん面白くなった。短編集的感覚で読むほうがいいというのはあとがきで訳者の古沢さんも言ってた。人物像が重なるけど語り手によって物語が変化していくのがプリースト節。いわゆる…

クリストファー・プリースト『夢幻諸島から』読書中

今更よーやくクリストファー・プリースト『夢幻諸島から』を読書中。観光ガイドの体裁の小説。単なるガイド的文章の部分が面白くなくて最初、なかなか乗れなかった。でも途中から俄然面白くなる。色んな章で同じ登場人物が出てきたりはするけどあまりそこを…

チャイナ・ ミエヴィル『ペルディード・ストリート・ステーション』上下(ハヤカワSF文庫)

前半、なかなか読む進めるのが大変だったけど後半になってからは一気。パルプノワール的SF系ファンタジィーってところかな。世界観はすーごく好きだけど後半の物語の流れは好みじゃないかな。前半あれだけ書き込んでおいてキャラの動かし方ちょっと雑だし。…

米澤穂信『さよなら妖精』(創元推理文庫)

1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。謎を解く鍵は…

ジャック・カーリイ『デス・コレクター』(文春文庫)

死体は蝋燭と花で装飾されていた。事件を追う異常犯罪専従の刑事カーソンは、30年前に死んだ大量殺人犯の絵画が鍵だと知る。病的な絵画の断片を送りつけられた者たちが次々に殺され、失踪していたのだ。殺人鬼ゆかりの品を集めるコレクターの世界に潜入、複…

ジャック・カーリイ『百番目の男』(文春文庫)

連続放火殺人を解決、異常犯罪担当部署に配属された刑事カーソンには秘密があった。誰にも触れられたくない暗い秘密だ。だが連続斬首殺人が発生、事件解決のため、カーソンは過去と向き合わねばならない…。死体に刻まれた奇怪な文字に犯人が隠す歪んだ意図と…

ギュンター・グラス『ブリキの太鼓』

今は精神病院の住人オスカルが、ブリキの太鼓を叩きながら回想する数奇な半生。胎児のとき羊水のなかで、大きくなったら店を継がせようという父の声を聞き、そのたくらみを拒むために3歳で成長をやめることを決意したオスカルは、叫び声をあげてガラスを粉々…

ジャック・カーリイ『ブラッド・ブラザー』(文春文庫)

きわめて知的で魅力的な青年ジェレミー。僕の兄にして連続殺人犯。彼が施設を脱走してニューヨークに潜伏、殺人を犯したという。連続する惨殺事件。ジェレミーがひそかに進行させる犯罪計画の真の目的とは? (文藝春秋:http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/bo…

ネレ・ノイハウス『白雪姫には死んでもらう』(創元推理文庫)

空軍基地跡地の燃料貯蔵槽から人骨が発見された。検死の結果、11年前の連続少女殺害事件の被害者だと判明。折しも、犯人として逮捕された男が刑期を終え、故郷に戻っていた。彼は冤罪だと主張しつづけていたが村人たちに受け入れられず、暴力をふるわれ、母…

夢枕獏『陰陽師 瀧夜叉姫』上下(文藝春秋)

平安の都では、奇妙な出来事が次々と起きていた。巨大な蜘蛛の牽(ひ)く車が姿を現わし、孕み女が、たてつづけに腹を裂かれ殺された。そんななか、顔にできた瘡が突然しゃべりだした平貞盛に晴明と博雅が呼び出される。それらは、やがて都を滅ぼす恐ろしい…

マックス・バリー『機械男』(文藝春秋)

僕は機械しか愛せない。人間は非論理的だ。恋人も友人もいないけれど、でも人間と関係を結ぶなんて非効率で面倒くさいじゃないか。そんなある日、僕は職場の事故で片脚を失う。そのときひらめいたのだ―エンジニアとしての才能を注ぎ込んで、生身より断然高性…

オリヴァー・ペチュ『首斬り人の娘』(早川書房)

1659年。ドイツ南部の街ショーンガウで子供が殺された。遺体にあった奇妙なマークを見た住人たちは、魔女の仕業だと殺気立つ。そして産婆のマルタが魔女と疑われて投獄される。だが、処刑吏クィズルとその利発な娘マクダレーナは、彼女の無実を確信していた…

ヨハン・テオリン『赤く微笑む春』(ハヤカワポケットミステリ)

エーランド島の石切場のそばのコテージに暮らしはじめたペール・メルネル。ある日彼のもとに、疎遠にしていた派手で傲慢な父ジェリーから、迎えに来るよう求める電話が入る。渋々父の別荘に赴くと、そこに待っていたのは謎の刺し傷を負った父だった。そして…

桜庭一樹『伏 贋作・里見八犬伝』(文春文庫)

伏――人であって人でなく、犬の血が流れる異形の者――による凶悪事件が頻発し、幕府はその首に懸賞金をかけた。ちっちゃな女の子の猟師・浜路は兄に誘われ、江戸へ伏狩りにやってきた。伏をめぐる、世にも不思議な因果の輪。(文藝春秋:http://www.bunshun.co.…

アンドレアス・グルーバー『夏を殺す少女』(創元推理文庫)

酔った元小児科医がマンホールにはまり死亡。市議会議員がエアバッグの作動で運転をあやまり死亡。一見無関係な事件の奥に潜むただならぬ気配に、弁護士エヴェリーンは次第に深入りしていく。一方ライプツィヒ警察の刑事ヴァルターは、病院での少女の不審死…

ジェフ・ニコルスン『装飾庭園殺人事件』(扶桑社ミステリー文庫)

ロンドンのホテルで、男の死体が見つかった。睡眠薬自殺と思われたが、美しい未亡人はそれを否定。遺体は高名な造園家で、いまは地方で装飾庭園を手がけているはずだった。それがなぜロンドンに?調査をはじめた未亡人の前に次々現われる奇妙な関係者たち。見…