ガブリエル ガルシア=マルケス『族長の秋』(集英社文庫)

架空の小国に君臨している大統領は、街道筋の娼婦を母に生まれた孤児であった。若くして軍隊に入ると、上官を裏切り、あくどい手段で昇進をかさねて今日の座についた。年齢は150歳とも250歳ともいわれ不詳。絶対的権力を持つ大統領の奇行、かずかずの悪業、彼に仕える部下たちの不安、恐怖、猜疑に満ちた日常を描く。(「BOOK」データベースより)

少々食欲失う系。グロ描写部分が妙にリアル感を感じさせるし、『コックと泥棒、その妻と愛人』と同じ描写はああ、やりそうだねとかだし。それだけイメージ喚起力のある小説ではあるんだけど。大統領好きになれないし。大統領の母は好き。なかなか読み進めなかったのは時系列の問題よりあちこち視点が変わるところで引っ掛かっていたみたい。いちいち、これだれ?と確認しちゃうし。『百年の孤独』のように好きっていう物語ではなかったけど、描写のうまさには感嘆。エピソードの積み重ねから時代の狂騒と哀れさを表出させていく手法にも感心。読み進めるうちにどんどん「あ、これ巧いなあ」と。

ラテンアメリカの文学 族長の秋 (集英社文庫)

ラテンアメリカの文学 族長の秋 (集英社文庫)