ギュンター・グラス『ブリキの太鼓』

今は精神病院の住人オスカルが、ブリキの太鼓を叩きながら回想する数奇な半生。胎児のとき羊水のなかで、大きくなったら店を継がせようという父の声を聞き、そのたくらみを拒むために3歳で成長をやめることを決意したオスカルは、叫び声をあげてガラスを粉々に砕くという不思議な力を手に入れる。時は1920年代後半、所はバルト海に臨む町ダンツィヒ。ドイツ人、ポーランド人、カシューブ人など多くの民族が入り交じって暮らすこの港町は、長年にわたって近隣の国々に蹂躙されつづけてきた。台頭するヒトラー政権のもと、町が急速にナチズム一色に染められるなかで、グロテスクに歪んでいく市井の人々の心。狂気が日常となっていくプロセスを、永遠の3歳児は目の当たりにする。ナチス勃興から戦後復興の30年間、激動のポーランドを舞台に、物語は猥雑に壮大に、醜悪に崇高に、寓意と象徴に溢れためくるめくエピソードを孕みながらダイナミックに展開する。(「BOOK」データベースより)

図書館からの借り本。
読むのが大変でした。確かにかなり厚い本ではあるのですがなぜ読むのがこんなに大変なのかよくわからない不思議な本でした。場面、場面は面白いんですが物語の芯がどこにあるのか捉えきれなかった感じ。視点が第一人称と第三人称の二つがあるのもなかなか入り込めなかった要因か。何より主人公にまったく感情移入できないし。なんというか3歳の身体で大人の精神のはずなんですが終始、子供ぽい自己中心的な幼児性のある人物だなあという印象で気持ち悪い。わりと物語のなかの小人というとどこかしら悲哀を感じさせるものが多いけどオスカルはそこがない。ファチの部分はわりと大丈夫なんですが親殺しを自慢したいのかなんなのか的な幼さがどうも受け入れられず…。とはいえ印象的なシーンもわりと多くあるし、個人的にはオスカルの祖母なんかは好きなキャラだし面白くないわけじゃない。情景描写の巧さには感嘆するし。ただ読む視点をどこに持っていったらいいか把握できなかったのが敗因かも。
気になったのは「黒い料理女」「親殺し?」「キリスト像へのこだわり」「語りの嘘はどこ?」