スチュアート・ウッズ『警察署長』上下(ハヤカワHM文庫)

1920年冬、ジョージア州の田舎町デラノの郊外で若者の全裸死体が発見された。就任間もない初代警察署長ウィル・ヘンリー・リーは、秘密結社K・K・Kの犯行と見て捜査を開始する。だが、検視の結果判明したのは、死体が警察関係者の手によって尋問された形跡があるという事実だった。一体、犯人は何者なのか?調査の末、やがて意外な人物が浮かびあがるが、そのときウィル・ヘンリーを思わぬ事件が襲った!南部の小都市を舞台に、40数年に及ぶ殺人事件を多彩な登場人物を配して描く大河警察小説。(「BOOK」データベースより)

40年という時間のなかでの米国南部の生活、価値観の変遷と政治的流れがあり、ひとつの街の始まりと黄昏までも描き切ってる。読み応えのある小説でした。

ヘンリー、サニー、タッカー三人の警察署長たちの生き様のなか、 暴力の連鎖、戦争の心的障害等がさりげなく提示され、暴力というものの根の深さも感じさせる。彼らは正義の人とは限らず決して英雄たちではない。そこの描き方に非常にリアルさを感じた。第一部で赤ちゃんだったり子供でほんの少ししか出てない脇が二部、三部で主として登場する流れも、私は伏線としてあり。またその主軸とともに語られるのがホームズとビリー。こちらは歴史と政治を体現するキャラクター。ビリーの実質的な親は明らかにホームズだ。実父ヘンリーはビリーのなかでは英雄になっちゃってて、影は落としてない感じ。葛藤があれば、警察官になってるでしょう。そこをあえて政治家目指すキャラにしたのが面白い。

警察署長〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

警察署長〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

警察署長〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

警察署長〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)