近藤史恵『胡蝶殺し』(小学館)

市川萩太郎は、蘇芳屋を率いる歌舞伎役者。花田屋の中村竜胆の急逝に伴い、その息子、秋司の後見人になる。同学年の自分の息子・俊介よりも秋司に才能を感じた萩太郎は、ふたりの初共演「重の井子別れ」で、三吉役を秋司に、台詞の少ない調姫(しらべひめ)役を俊介にやらせることにする。しかし、初日前日に秋司のおたふく風邪が発覚。急遽、三吉は俊介にやらせる。そこから、秋司とその母親由香利との関係がこじれていく。さらに、秋司を突然の難聴が襲う。ふたりの夢である「春鏡鏡獅子」の「胡蝶」を、ふたりは舞うことが出来るのか…?(小学館http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784093863803)

歌舞伎の家に生まれてきた男の子二人の物語。歌舞伎好きの人にもそして歌舞伎の世界を知らない人にもオススメ。著者が歌舞伎好きな方なので「梨園」の世界を丁寧に、ほどのよい愛情をこめつつ案内してくれています。子役二人の描写がうまく、またラストのもっていきかたが良いです。近藤さんは今までも歌舞伎の世界を題材に描いてきているけど、この作品が一番好き。人物描写のバランスがいいし、これからの歌舞伎のエールにもなってる。歌舞伎を観たことない人でも観てみたいと興味を持たせる作品になっているんじゃないかな。
装丁がとても綺麗。本のカヴァーをめくってみると『伊勢音頭』のワンシーンが。

胡蝶殺し

胡蝶殺し