マイクル・コナリー『トランク・ミュージック』上下(扶桑社文庫)

ハリー・ボッシュが帰ってきた!ハリウッド・ボウルを真下に望む崖下の空き地に停められたロールスロイスのトランクに、男の射殺死体があった。「トランク・ミュージック」と呼ばれる、マフィアの手口だ。男の名はアントニー・N・アリーソ、映画のプロデューサーだ。どうやら、彼は犯罪組織の金を「洗濯する」仕事に関わっていたらしい。ボッシュは被害者が生前最後に訪れたラスヴェガスに飛ぶ。そこで彼が出会ったのは、あの『ナイトホークス』で別れた運命の女性、エレノア・ウィッシュだった。(「BOOK」データベースより)

ボッシュシリーズ第五弾。『ラスト・コヨーテ』でボッシュが自身のトラウマと向き合ったことで次の段階の物語に入ったということでしょう、前四作と違い、ボッシュの過去が影を落とさない物語になっています。またボッシュ自身のキャラもピリピリと尖がった部分が少し落ち着いてきた雰囲気。今回は新任の上司と二人の部下とのチームワークが安定。ハードボイルドの側面より、地道な捜査の積み重ねや情報戦、といった場面が多く見受けられ警察ものとしての側面が強く出ています。また2転3転する物語運びもかなり巧みで、意外性に驚きつつも一気に読めてしまいます。キャラクターたちの内面性の部分の書き込みが今回はあまり無いのが少し物足りないですがエンターテイメント性は高くなっています。にしてもまさかエレノア・ウィッシュが再登場とは…。結末にはある意味ビックリ。これで作風が変化するのかな?

トランク・ミュージック〈上〉 (扶桑社ミステリー)

トランク・ミュージック〈上〉 (扶桑社ミステリー)

トランク・ミュージック〈下〉 (扶桑社ミステリー)

トランク・ミュージック〈下〉 (扶桑社ミステリー)