マイクル・コナリー『ラスト・コヨーテ』上下(扶桑社文庫)

ロサンジェルスを襲った大地震は、ボッシュの生活にも多大な影響を与えた。住んでいた家は半壊し、恋人のシルヴィア・ムーアとも自然に別れてしまう。そんななか、ある事件の重要参考人の扱いをめぐるトラブルから、上司のパウンズ警部補につかみかかってしまったボッシュは強制休職処分を受ける。復職の条件である精神分析医とのカウンセリングを続ける彼は、ずっと心の片隅に残っていた自分の母親マージョリー・ロウ殺害事件の謎に取り組むことに。(「BOOK」データベースより)

ボッシュシリーズ第四弾。前作『ブラック・ハート』でシリーズものとしての骨格が固まったなと感じたのですが、今作はその出来上がった骨格を踏まえて前三作で折に触れていたボュシュのトラウマの根源「母の死」にまつわる事件を扱っていきます。このシリーズものの構成として上手いですねえ(感心)。
今回は組織になじめず暴力的な一匹狼的なボッシュの側面を強調しハードボイルド色が強い作品です。気に喰わない上司を殴り精神分析医とのカウンセリングを余儀なくされたボッシュは自身を見つめ、33年前の娼婦であった母が殺された事件を追うことに。コヨーテの姿がオーバラップするこの物語はまさにボッシュ救済の物語であると同時に物哀しい結末を迎えることにもなります。善と悪が簡単にひっくり返るの境界線に立つものたちの姿が描かれ、やるせなさが漂う。しかし、また大きな荷を背負っていたボッシュの大きな転機でもあり、前に進んでいくそんな予感をさせる広がりも感じさせました。

ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)

ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)