マイクル・コナリー『シティ・オブ・ボーンズ』(ハヤカワHM文庫)

丘陵地帯の奥深く、犬が咥えてきたのは少年の骨だった―20年前に殺された少年の無念をはらすべく、ハリウッド署の刑事ハリー・ボッシュは調査を始めた。まもなくボッシュは現場付近に住む児童性愛者の男に辿りつくが、男は無実を訴えて自殺を遂げる。手掛かりのない状況にボッシュは窮地にたたされ…(「BOOK」データベースより)

表紙の雰囲気が扶桑社・講談社と違って渋くて洒落ていて素敵。内容も他と比べて硬質な感じ。なぜだろう?同じく古沢さんが翻訳してるのに。

この作品はボッシュシリーズの転換となった『ラスト・コヨーテ』に続き、シリーズの転換となる作品。警察内部の組織からの圧力やマスコミに振り回されながらも信念を持って地道な捜査を続けていくボッシュ。簡単に解決するかにみえた事件だったが…。

個人的にこの作品、非常に好き。前半、淡々と物語は進むのだけどそれが終盤に効いている。相変わらずヒロイン女性が出てくるのだけど今回はいらないって思わなかったな。この作品の陰影のあるトーンを決めるうえでの必要不可欠な存在。また弱きものへ向かう暴力への憎しみが底辺にあり、その憎しみが時に人としての弱さになり、また人としてどこか逸脱してしまいがちなボッシュだが、今回はその人間性が良い方向に向かった作品のような気がする。ボッシュはどこへ向かうのだろう。

ちょっと反則だけどボッシュシリーズを読ませるのに『シティ・オブ・ボーンズ』をまず読ませてもいいかも。クオリティが高いのとボッシュの個性が一際活きてるような気がするの。 あ〜、でも全体的に淡々としてるから、他のに比べたらエンターテイメン性の高さはないかな。そこらで最初の1冊にするのは難しいかなあ。ボッシュの良い面での魅力は満載なんだけどな。ほんと良い作品だと思うわ。

シティ・オブ・ボーンズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

シティ・オブ・ボーンズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)