マイクル・コナリー『エンジェルズ・フライト』上下(扶桑社文庫)

LAのダウンタウンにあるケーブルカー、“エンジェルズ・フライト”の頂上駅で惨殺死体が発見された。被害者の一人は、辣腕で知られる黒人の人権派弁護士ハワード・エライアス。市警察の長年の宿敵ともいえる弁護士の死に、マスコミは警官の犯行を疑う。殺人課のボッシュは、部下を率いて事件の捜査にあたるが…。緻密なプロットと圧倒的な筆力で現代アメリカの闇を描き出す、警察小説の最高峰“ハリー・ボッシュ”シリーズ第六弾、ついに待望の文庫化。単行本『堕天使は地獄へ飛ぶ』改題。(「BOOK」データベースより)

ボッシュシリーズ第六弾。これは見事。個人的にボッシュ・シリーズのなかでもかなり高い位置につく。この巻も正当な警察小説。一方的な集団の暴走、警察内部の腐敗、そして家庭内暴力。罪とはいったい何か。
複雑な構成ながら濃いミステリ読みならある程度先読みが出来てしまうのだけど、それでも非常に良い作品だと思う。全編にやるせなさ、寂寥感が漂う。誰もが様々な意味での境界線に立っている哀しい存在、そんなものが表現されてる。救いのないラスト。人はいったいどこへ向かうのだろう。
題材の捉え方が今まで以上に小説としてうまく昇華されているように思う。

エンジェルズ・フライト〈上〉 (扶桑社ミステリー)

エンジェルズ・フライト〈上〉 (扶桑社ミステリー)

エンジェルズ・フライト〈下〉 (扶桑社ミステリー)

エンジェルズ・フライト〈下〉 (扶桑社ミステリー)