キャロル・オコンネル『吊るされた女』(創元推理文庫)

キャシー・マロリー、ニューヨーク市警巡査部長。完璧な美貌、コンピューター・ハッキングにかけては天才的な頭脳をもち、他人に感情を見せることのない氷の天使。相棒の刑事の情報屋だった娼婦が、何者かに吊された。美しい金髪は切られて口に詰めこまれ、周囲には虫の死骸。あれこれ臆測をめぐらす仲間を尻目に、マロリーは事件を連続殺人鬼の仕業と断定する。だが……。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488195137)

首を長くして待っていたマロリーシリーズの第6弾です。キャロル・オコンネルはノンシリーズのほうが日本では評価が高いように思いますが私はこのマロリーシリーズが大好き。もっとコンスタントに訳されて欲しいな〜。主役のキャシーも素敵ですが何より脇のキャラの面々が本当に魅力的なのです。
本作はライカー刑事の情報屋だった娼婦が吊るされた事件のよって連続殺人犯を追う現在とキャシーの養父であったルイ・マーコヴィッツが気にかけていた20年前の事件、そしてキャシーがストリートチルドレンであった時に起こった事件の話が交錯していきます。
3つの事件をうまく絡ませていく構成が見事。今回は現在進行形の事件をマロリーが、マロリーの過去の事件をチャールズが追いっていく形で、その間にタイカー刑事がいる。その人物配置もお見事。
連続殺人事件の背景の重さ、キャシーの過去の切なさに胸が衝かれました。この作家特有の「人」に対する優しい視点が私は好きです。マロリーは回を重ねるごとに氷の女から血が通った女性へと少しづつ変化していっています。個人的にはチャールズが報われて欲しいと願いつつ次回作を待ち望んでおります。

吊るされた女 (創元推理文庫)

吊るされた女 (創元推理文庫)