マイクル・コナリー『夜より暗き闇』上下(講談社文庫)

心臓病で引退した元FBI心理分析官テリー・マッケイレブは、旧知の女性刑事から捜査協力の依頼を受ける。殺人の現場に残された言葉から、犯行は連続すると悟ったテリーは、被害者と因縁のあったハリー・ボッシュ刑事を訪ねる。だが、ボッシュは別の殺しの証人として全米が注視する裁判の渦中にあった――。(講談社http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2737930)

面白かった。ボッシュシリーズのなかでも異色。マッケイレブから見たボッシュが中心。そうか、そうきたかって感じ。主役は『わが心臓の痛み』テリー・マッケイレブ。もちろんボッシュが絡んでくるけど、視点はマッケイレブです。上巻ではしかも、ボッシュが…え〜、え〜、そういう扱い?でビックリ。 下巻ではボッシュも活躍します。今回はコナリーの技巧の部分がうまく物語と噛み合ってて読み応えあった。余計な女性が出てこないのも吉。全体的に締まってる。

マッケイレブとボッシュは合わせ鏡のような存在なのかな。向かってる方向は同じなんだけど、求めるものが違う。にしてもボッシュというキャラがどんどん面白くなってる。ギリギリのとこに立ってる感じいいんだな。それと基本、弱者への共感が強いとこが個人的に好ましい。そこに危うさがあるんだけど。

にしてもマイクル・コナリーは裁判シーンを描くのが上手いなと思う。『ブラック・ハート』でも感心したけど『夜より暗き闇』でも緻密に描き出している。この作品でも裁判がかなり重要な役割を果たす。また、今作品は画家ヒエロニムス・ボッシュの絵画についての薀蓄が出てくるのである程度、ボュシュの絵を知ってるほうが面白いと思う。個人的に今年、スペインのプラド美術館でいっぱいボュシュの絵を観て来た(一応解説付きで)のでそこら辺、ニヤニヤしながら読めて楽しかった。

夜より暗き闇(上) (講談社文庫)

夜より暗き闇(上) (講談社文庫)

夜より暗き闇(下) (講談社文庫)

夜より暗き闇(下) (講談社文庫)