アン・クリーヴス『大鴉の啼く冬』(創元推理文庫)

2006年新年を迎えたシェトランド島。孤独な老人マグナスを深夜に訪れた黒髪の少女キャサリンは、4日後の朝、大鴉の舞い飛ぶ雪原で死んでいた。真っ赤なマフラーで首を絞められて。住人の誰もが顔見知りの小さな町で、誰が、なぜ彼女を殺したのか? 8年前の少女失踪事件との奇妙な共通項とは? ペレス警部の前に浮かびあがる、悲しき真実。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488245054)

英国推理作家協会賞受賞作です。イギリス女流推理小説作家の充実ぶりは素晴らしいですね。この作家が紹介されたことにまずは喜びを感じます。どちらかというと推理小説として正統派。女流作家ならではの人物造詣の密さ深さが見事です。早く他の作品も訳していって欲しいです。


スコットランドの辺境、シェトランド島を舞台にした作品。息苦しいまでの人間関係の濃さがある閉鎖的な地域で起こった殺人事件。複数の人物の視点から描かれ、陰鬱な冬の情景描写と人間関係が浮かび上がってくる。かなりの読み応え。一筋縄ではいかない真相へと向うさまが端正な筆致で描かれていきます。作中でサラ・ウォーターズ『半身』が言及されたりします。そんな細かい描写もポイント高し。これはイギリスミステリ好きにかなりオススメ。

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)