ジョナサン・キャロル『天使の牙から』(創元推理文庫)

ジョナサン・キャロルだ〜〜以外の何者でもない物語。日常に潜む生と死の境界線の曖昧さをぞっとするような異として描く。お得意のホラーファンタジィーですがキャロルにしてはかなり直裁的です。ヘタしたらチープになりかねない題材ですが、そこはキリスト教的感覚からするとチープじゃないんでしょうね。不条理な世界はどこで作られるのか…。キャロルは読む人を選ぶ作家だと思いますが、他の作品よりはわりとストレートなので読みやすいかも。この作品は男性の視点パートと女性の視点パートが交互に出てきます。物語は途中までまったく絡みません。ラストになってようやく交差します。私は女性パートが非常に面白かったです。「言葉」がわりとキーワード的に使われています。


ラストがよくわからなかったりしました。彼らの日常は決して救われるわけではなく、そのままで続いていく。ただ希望を捨てるなということでしょうか?切り開け?やはりキリスト教的感覚でのラストということかな。キャロルは理不尽な死を許せないのかもしれません。

天使の牙から (創元推理文庫)

天使の牙から (創元推理文庫)