P・D・ジェイムズ『灯台』(早川ポケットミステリ) 

世界の要人のための高級リゾート地、カム島で有名作家が変死体で見つかり、カム島で国際会議が検討していたスコットランド・ヤードはアダム・ダルグリッシュ警視長を派遣することに。ダルグリッシュ警視長は部下二人を連れ、捜査に当たるが…。


P・D・ジェイムズが孤島ものミステリを書いた、というだけでかなり期待。『神学校の死』あたりから物語自体はシンプルな方向へ向かってはいるが相変わらずの緻密な描写力。85歳でこれを描いたってことが驚きです。今回ミステリとしては本格ミステリに近い構成。シンプルなだけに古き良き時代の探偵小説を彷彿させます。ただ、一筋縄でいかないのがP・D・ジェイムズ。彼女ならではの意地が悪いとさえ思わせる人を鋭い目で見つめる深い人物描写には相変わらず圧倒させられます。「フィクションのなかの真実」、それは彼女の作品のなかにある。それでもここ最近はその視線にどこか若い人への希望が託されているようにも感じます。これが「最後」ではないことを祈ります。まだまだ読みたい。

灯台 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

灯台 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)