ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(新潮クレスト・ブックス)

心優しいオタク青年オスカーの最大の悩みは、女の子にまったくモテないこと。どうやら彼の恋の行く手を阻んでいるのは、かつて祖父や母を苦しめたのと同じ、ドミニカの呪いらしい――。(新潮社:http://www.shinchosha.co.jp/book/590089/)

SF、ファンタジィー、アニメ、ゲームをこよなく愛する青年オスカーとその一族の親子三代に渡る「呪われた一族」の物語。ドミニカ共和国を支配した独裁者トルヒーヨの圧制時代からアメリカに移住してから後も禍に苛まれ、もがきながら生きていく家族の姿を描き出す。
章ごとに語り手が変わり読む進めていくううちに一族の年代記になる構成。語り口はポップでテンポがよく読みやすい。とはいえ語り手たちは抑圧された環境にいるため内容はシリアス。その対比がユニーク。私は主人公のオスカーより姉ロラと母ベリ、そしてベラ叔母であり育て親ラ・インカの物語のほうが強烈で興味深かった。オスカーのオタクぶりはわりと真っ当で恋愛に不器用な青年の青春物語の側面が強い。
独裁者トルヒーヨを描くという部分でバルガス=リョサの『チボの狂宴』に対抗して書かれた小説とのこと。私はドミニカの歴史にはかなり疎く理解が足りなさ過ぎて小説への理解としてはかなり浅くなったことは否めない。

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)