P・D・ジェイムズ『高慢と偏見、そして殺人』(ハヤカワポケットミステリ)

紆余曲折の末にエリザベスとダーシーが結婚してから六年。二人が住むペンバリー館では平和な日々が続いていた。だが嵐の夜、一台の馬車が森から屋敷へ向けて暴走してきた。馬車に乗っていたエリザベスの妹リディアは、半狂乱で助けを求める。家人が森へ駆けつけるとそこには無惨な死体と、そのかたわらで放心状態のリディアの夫ウィッカムが……殺人容疑で逮捕されるウィッカム。そして、事件は一族の人々を巻き込んで法廷へ!(早川書房http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/211865.html

オースティン『高慢と偏見』の完全なる続編として書かれているので元本を読んでおくべし。どう元ネタを調理するかと期待したのだが元本に敬意を払いすぎていて飛躍がないのが残念。ミステリ仕立てだがミステリとしては少々平凡かな。オースティンの世界観を壊さないで殺人事件を起こすにはこれしかないという感じなのでしょうか。最初のうちはP・D・ジェイムズの『高慢と偏見』という作品の批評たる本かと思ったのですが読み進めてみると、ジェイムズお気に入りのキャラクターへの愛情めいた本であった。ま、年を得て丸くなった御大ゆえ往年の鋭さは求めてはいけない。にしても、ヤング夫人の扱いはひどすぎると思う。それとシャーロットへの扱いも。いくらオースティンの作品に倣ったとはいえP・D・ジェイムズまでもがこの時代に精神的に自立しようとした女性を悪く描くとは…(正直がっかり)。

高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)