ウィリアム・ピーター・ブラッティ『ディミター』(創元推理文庫)

1973年、宗教弾圧と鎖国政策下の無神国家アルバニアで、正体不明の人物が勾留された。男は苛烈な拷問に屈することなく、驚くべき能力で官憲を出し抜き行方を晦ました。翌年、聖地エルサレムの医師メイヨーと警官メラルの周辺で、不審な事件や〈奇跡〉が続けて起きる。謎が謎を呼び事態が錯綜する中で浮かび上がる異形の真相とは。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488198114)

エクソシスト』の作家ということでホラー風味なのかと思っていましたらホラーではなくミステリの範疇。でも正統派ミステリではなく少しばかり境界線上にある作品。何の境界線かはネタばれになるので。三部に分かれていて第一部は1970年代の鎖国政策下のアルバニアが舞台の謎めいた虜囚と尋問者の物語。第二部はエルサレムに舞台が移り第一部と雰囲気ががらりと変化しそこで起こる事件が少しづつ第一部とリンクしていく。そして第三部で解決していく手法。第一部の謎めいた物語が非常に面白かった。謎解きはある意味あっけない。不思議な読後感でした。