ジョー・ヒル『ホーンズ 角』(小学館文庫)

ハートシェイプト・ボックス』『20世紀の幽霊たち』などで着実のその地位を確立してきたモダンホラーの貴公子、ジョー・ヒルの最高傑作が誕生した。フランツ・カフカの『変身』に匹敵するプロローグから、息も尽かせない地獄の描写が、壮絶のラストシーンまで続いている。長編ホラーの歴史を変える、著者渾身の一撃!(小学館http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094084658

イグは1年前に恋人メリンをレイプされて殺されしかもその殺人容疑を掛けられ失意の日々を送っていたのだが…。イグがある朝起きてみるとこめかみに角が生えていた。そしてその彼と接した者たちは心の奥底にある悪意を噴出させていく。

短編集『20世紀の幽霊たち』が非常に良かったので新作長編『ホーンズ 角』を手に取ってみました。殺人事件の真相を追うホラーサスペンスのなかに主人公イグと恋人メリンの青春恋愛譚を組み込み、現在と過去と行き来しつつ描いた小説。章ごとにテイストを変えつつイグの内面と彼の周囲の人々の在り様を展開していくのだけどテンポが良い場面と冗長な場面とが混在。リーダビリティは良いんだけど物語の吸引力は散漫という不思議な小説。作者がまだ長編小説に書くのに慣れてないのかな〜という感じも。イグとメリンの青春恋愛譚のほうは瑞々しく一途でとても良かったのですがホラーの部分はPOPすぎて怖さが伝わってこないような。宗教モチーフが最初からベタな感じで登場するのでそこで好みが分かれそう。個人的にはクーンツテイストを強く感じました。B級ホラーで「愛」に一途というところで。恋愛譚の部分がオッド・トーマスに似てたりするのでオッド・トーマスが好きな人はぜひ読んでみてください。

ホーンズ 角 (小学館文庫)

ホーンズ 角 (小学館文庫)