ケイト・モートン『リヴァトン館』上下(RHブックス+プラス)

老人介護施設で暮らす98歳のグレイスの元へ、新進気鋭の女性映画監督が訪れた。「リヴァトン館」という貴族屋敷で起きた70年前の悲劇的な事件を映画化するため、唯一の生き証人であるグレイスに取材をしたいと言う。グレイスの脳裏に「リヴァトン館」でメイドとして過ごした日々があざやかに蘇ってくる。そして墓まで持っていこうと決めていた、あの惨劇の真相も……。死を目前にした老女が語り始めた、驚愕の真実とは?気品漂う、切なく美しいミステリ。 (武田ランダムハウスジャパンhttp://www.tkd-randomhouse.co.jp/books/details.php?id=1106)

ゴシックサスペンスとの煽りがあったけどそれはちょっと違うかな。英国マナーハウスを舞台にした歴史ロマンス小説というところか。第一次世界大戦とその終結に伴う激動の歴史に翻弄されたリヴァトン館に住まう貴族と使用人たちの物語。
98歳の老女グレイスが語りだす過去。少女時代メイドとして奉公にあがったリヴァトン館で出会った人たちとの交流を丹念にじっくりと描き出し積み重なった「秘密」をあぶり出す。ミステリとしては先読みできてしまうのだけどそこに活写された人物や生活描写がとても良かった。特に前半のリヴァトン館での描写がかなり好み。「秘密のゲーム」がかなりツボだった。また過去と現在の語りのバランスが上手い。また時代を描く上で戦争の影をきちんと描きこんでいるのも○。マナーハウスものが好きなのでかなり好みではあったけど少し物足りなさも。個人的にグレイスの視点がある部分、仕方ないとはいえハンナになってしまったことで物語のバランスが崩れたのが不満。またグレイスのその後がうま〜く隠されているのも。「また別の話」になるのかもしれないけどもう少し描いてもいいと思う。
この作品を気に入った人は著者あとがきにも触れているけどロバート・アルトマン監督『ゴスフォード・パーク』はぜひ観たほうがいい。ちょうど『リヴァトン館』が描かれた時代と同じ時代のマナーハウスもので映画として傑作!!この映画大好き。