ビム・ベンダース監督『pina ピナ・バウシュ踊り続けるいのち』

ビム・ベンダース監督『pina ピナ・バウシュ踊り続けるいのち』は完全にピナ不在の映画だった。いわばピナの慰霊碑をこれがピナでしたと言っているような映画だった。どこにもピナはいない。ピナが見た世界、ピナが語ろうとした世界はどこにもなかった。私にはこの映画はとても不満。ピナってどんな人?どんな踊り?という興味で観てもピナの世界はそこにはないです。正直、ピナを知らない人にこの映画はオススメできない。あそこまでピナの視点が欠けてる映画だとは思わなかった。型の断面があるだけです。ピナの魂がそこにはなかった。不在を痛感させられただけだった。唯一、ピナの踊りは外の世界に出ても存在感を失わない踊りだったんだと、それがわかっただけかな。せめて何か一つの作品を映像として見せることはできなかったんだろうか。
私にとってピナの作品を観るということはピナと対話することだった。ピナの作品はそういうものだった。ピナはミクロとマクロが愛と憎しみが喜びと悲しみが相反するものが同等に内包された世界観の持ち主であったと私は感じている。その世界観、視点をこの映画に残念ながら見出すことが出来なかった。とても残念。