ジョン・フランクリン・バーディン『悪魔に食われろ青尾蝿』(創元推理文庫)

精神病院に入院して二年。ようやく退院が許されたハープシコード奏者のエレンは、夫の待つ家に帰り、演奏活動の再開を目指す。だが楽器の鍵の紛失に始まる奇怪な混乱が身辺で相次ぎ、彼女を徐々に不安に陥れていく。エレンを嘲笑うがごとく日々増大する違和感は、ある再会を契機に決定的なものとなる。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488135034)

1940年代に描かれたサスペンス。当時は斬新だっただろうなあ。物語描写、心理描写がとても上手いので今読んでも充分に面白い。精神分裂症をわずらった主人公の虚実の境界線にある曖昧模糊な混乱した世界の不協和音がストレートに伝わってきて胸がキリキリしてきます。現在でもこういう題材や手法のミステリは多く書かれ、もっと複雑に組み立てているので趣向の部分を重要視する人には物足りないかもしれないけど、私は時代の古さにかえって惹かれました。

悪魔に食われろ青尾蠅 (創元推理文庫)

悪魔に食われろ青尾蠅 (創元推理文庫)