奥泉光『神器 -軍艦「橿原」殺人事件-』上下(新潮社)

探偵小説好きの青年が一兵卒として乗船した軍艦「橿原」には、「神器」がひそかに持ち込まれていた――。相次いで起こる変死事件、そして極秘の任務をめぐって錯乱する兵士たちの思いを運んで大海原を進む「橿原」の真の使命とは?(新潮社:http://www.shinchosha.co.jp/book/391202/

奥泉光さんらしい小説ジャンルを包括し、解体し、「小説」という虚構性を存分に活かした多重構造の物語。奥泉さんの「戦争と人」というものへの拘わりを様々な立場、観点から語っていく。ひどく猥雑で、そして真摯な物語だ。生きることへの希望と信頼感がゆらぐ世界のなかで一本の細い糸として途切れなくあることに安心しホッとする。

神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件

神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件

神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件

神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件