ヘニング・マンケル『タンゴステップ』上下(創元推理文庫)

男は54年間、眠れぬ夜を過ごしてきた。森の一軒家、ダークスーツを着て、人形をパートナーにタンゴを踊る。だが、ついに敵が男を捕らえた……。ステファン・リンドマン37歳、警官。舌ガンの宣告に動揺する彼が目にしたのは、新米のころ指導をうけた先輩が、無惨に殺害されという記事だった。治療を前に休暇をとった彼は、単身事件の現場に向かう。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3846)

スウェーデンの警察小説です。陰惨な事件の裏にあるスウェーデンという国の第二次大戦中の暗部が描かれていきます。またその闇が現在も続いていることを描き出す。北欧の美しい国というイメージから程遠い現実。その現実をしっかりと見つめ、それがどういうものであるのかをきちんと考えさせる、かといって小難しい小説ではなくミステリーという娯楽として成り立っている小説。こういうミステリが描けるヨーロッパの懐の深さも感じます。プロローグとモノローグは効果的とは思えませんが本筋に吸引力があり読ませます。主人公がちょっとウジウジしすぎてるのがカンに触ったりもしますが(笑)、「目をそむけ何かから逃げる」ことがいいのか?というこの小説の問いかけが底辺にあると思えば、このキャラクターがピッタリなのでしょう。

タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫)

タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫)

タンゴステップ〈下〉 (創元推理文庫)

タンゴステップ〈下〉 (創元推理文庫)