恩田陸『蒲公英草紙--常野物語』(集英社文庫)

舞台は20世紀初頭の東北の農村。旧家のお嬢様の話し相手を務める少女・峰子の視点から語られる、不思議な一族の運命。時を超えて人々はめぐり合い、約束は果たされる。切なさと懐かしさが交錯する感動長編。

久々に、恩田陸で満足した。ここ最近、話の終息の仕方に物足りなさを感じていたのだけど、『蒲公英草紙』にはそれを感じなかった。『光の帝国』の常野一族の物語の第2弾。

相変わらず、恩田陸らしい少女マンガテイストな美しい人たちの美しい物語。続けざまに恩田さんの作品を読んでいると時にそれが鼻につくこともあるのだけど、常野物語に関してはキャラクターたちの浮世離れしたその美しさが必然と思える。草紙というタイトルがピッタリの美しく切ない「物語」。仏師、円空のエピソードにインスパイアされて描いた作品のようだ。救いとは何か。

恩田さんには珍しくメッセージ性が強い物語だった。時代の急激な変化へに飲まれ、美しい精神性が犯されていく恐れ、そんなものも描いている。物語の時代は明治だけど、今の時代へのメッセージとも受け取れる。

蒲公英草紙 常野物語 (集英社文庫)

蒲公英草紙 常野物語 (集英社文庫)