江戸川乱歩『人間豹』(創元推理文庫)

燐光を放つ双眸炯炯と、野獣の膂力を持つ人間豹。人と豹のあわいに生まれ落ちたか、千古に解き難き謎を秘めた怪物は、帷幄の臣たる父親と戮力協心、神算鬼謀をもって帝都市民の心胆を寒からしめる。さしもの名探偵明智小五郎も一敗地に塗れ、不逞の輩はあろうことか明智夫人に毒手を伸ばす。文代さん危うし!(創元社http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=1598)

エログロバカミスというか、エログロバカサスペンスでした(笑)。乱歩フォーラム有栖川有栖センセがあれこれツッコミを入れていましたがこれはツッコミしたくなるわ。言い足りなさそうにしてたのもよくわかる。あれもこれも、ここも言いたかったんでしょうね、と。

いやあ、乱歩先生のフェチシズム溢れた見事な通俗小説。なんて荒唐無稽なストーリー(笑)そういや乱歩ってエロでしたねえ、グロでしたねえ。ジトーッとした体温が感じられるねちっこい文章。この小説、ツボな人にはツボ、ダメな人にはダメでしょう。

ツボな人にはこの猥雑さが好きでしょうね。ここまで徹底していれば素晴らしいですよ。生理的気持ち悪さ爆裂ですわ。毒々しいまでの色彩と映像。しかも章ごとにイチイチ無理矢理にでも盛り上げようとする展開も面白い(やら可笑しいやら?)。人間豹って人と豹の混血人。この恩田の逆恨み自己ちゅーストーカーな悪人ぶりが、外観の気持ち悪さ以上に気持ち悪い。そして輪にかけて恩田父ちゃんのマッドサイエンティストな変人ぶりが恐ろしい。なんか昔懐かしい雰囲気。いや古い作品だから当然なんですが(^^;)

しかし、乱歩先生、これ青少年向けに書いたって?まじですか?うーん、昔のほうがエロには寛大。この作品、コーネル・ウールリッチ(ウイリアムアイリッシュ)『黒いアリバイ』にインスパイアされた作品らしいのですがこれも読んでみようかしら。

それにしても見せ場主義なストーリーなので歌舞伎化に(『江戸宵闇妖鉤爪』)と思ったのも無理はないが、これをどーやって歌舞伎に転化するのか?エロのとこも女形さんなので肌は見せられないしねえ。帯クルクル、あれぇ〜、は絶対やるな。でも熊ぐるみはどーすんだ??その興味がますます湧いてきた。 染五郎さん、恩田(人間豹)は小平次で演じた粘着不気味系でいくのかな?神谷のチト情けない系は無理なくやれるでしょう(笑)

人間豹 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

人間豹 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)