東野圭吾『手紙』(文春文庫)

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く……。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。(文藝春秋http://www.bunshun.co.jp/book_db/7/11/01/9784167110116.shtml)

かなり話題になった作品。今更感がありますが読んでみました。この作品に関しては題材が良いと思う。犯罪者の家族の苦しみや周囲の差別意識を描いた作品。犯罪被害者の家族を描く作品は多いけど犯罪者の家族を描く作品は多くはない。なかなか書きづらいからだろう。そこをしっかり描こうという部分でこの作品は成功している。犯罪者の家族への差別意識は誰にでも持ちえる感情だ。その感情をこの作品は肯定している、しかし、それでいいのか?という感情も読者に持たせる。大きな部分でのストーリーラインがとても上手い作品と思う。素直にいい作品だ、と思う。
ただ、やはり何冊か読んできての感想なのだけど、個人的に東野圭吾のキャラクター造詣があまり好きじゃない。なんだかどれもこれも薄っぺらく感じてしまう。話を書くために無理矢理作り出したキャラという感じをどうしてもぬぐいきれない。私が東野圭吾と感性が合わないのだろう。

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)