ロイス・マクマスター・ビジョルド『<五神教シリーズ>影の棲む城』上下(創元推理文庫)

チャリオン国太后イスタは鬱々としていた。元国主の夫はとうに亡く、娘はチャリオンの国主となっている。では、自分は? 神の手が触れた聖者でありながら、周囲からは気がふれていると思われていたのも昔のこと。このまま故郷の城で、とらわれ人のように一生を過ごすのか。耐えられなくなったイスタは、神に祈願をする巡礼として、わずかな供と旅に出た。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3804

『チャリオンの影』の続編です。カザリルの活躍でチャリオン王家が救われてから3年、国主イセーレの母イスタは城から逃げ出したくて巡礼の旅という名目で旅に出るところから始まります。今回の主人公、イスタは前作ではどういう人物かハッキリしないままでしたが、今回は意志の強い女性として登場します。とはいえ気が強く少々捻くれもの(笑)、しかもなんだかんだ誰かしらの庇護の元にありいつも安全なのであんまり感情移入とか同情できなかったり…。
でも、周囲にいる人物がかなり魅力的なので一気に読んでしまいました。前回活躍したキャラクターたちはほとんど出てきませんが引き続きの登場は姫神の騎士フェルダとフォイのグーラ兄弟。そして新たにイスタの侍女となるリス、庶子神神官カボンにタイトルの城の住人、アリーズとその奥方カティラーラに、アリーズの異父弟イルヴァンなど。それぞれに魅力的な人物が次から次へと登場。彼らの魅力で物語を引っ張っていきます。またキーパーソンとなる庶子神のちょっと下世話な魅力がまた一興(笑)女性が皆強くて魅力的なのが基本です。私は天真爛漫なリスと旦那一途のカティラーラが好きです。
宮廷陰謀ものお得意のビジョルド節炸裂の作品。ファンタジィーとしても王道。ちょっと神の力が安易に使われている気もしますが、まあ収束させるにはあれしかなかったでしょうし。

影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈下〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈下〉 (創元推理文庫)