イアン・マキューアン『贖罪』上下(新潮文庫)

始まりは1935年、イギリス地方旧家。タリス家の末娘ブライオニーは、最愛の兄のために劇の上演を準備していた。じれったいほど優美に、精緻に描かれる時間の果てに、13歳の少女が目撃した光景とは。(新潮社:http://www.shinchosha.co.jp/book/215723/)

泣きたい…残酷だ。美しく切ない物語、だと思っていたよ。でもそれだけじゃなかった。現実と非現実、そして現実。私は非現実に浸っていたかった。罪を償うことは出来るものなのか?そんな問いかけであったのだろうか。そして物語を紡ぐことはいったいどういうことなのか、という問いかけでもあった。
19世紀以降の小説技巧を壊すのではなく見事に昇華させてしまったマキューアンに脱帽。ソローキン『ロマン』と同じくらいガツンとやられた。私は19世紀後期の小説が好きなのだというのも再確認だ。で、どっぷり浸っていたらラストでいきなり冷水掛けられた気分…。

贖罪〈上〉 (新潮文庫)

贖罪〈上〉 (新潮文庫)

贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)

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