パトリシア・A・マキリップ『オドの魔法学校』(創元推理文庫)

両親を病で亡くし、ひとりぼっちで暮らすブレンダンのもとに、オドと名のる女巨人が訪れた。都にある魔法学校の庭師になって欲しいというのだ。求めに応じたブレンダンだったが、慣れない都の生活になかなかなじめない。一方王宮では、歓楽街で興行する魔術師の噂に、王と顧問官たちが神経をとがらせていた。果たして件の魔術師はただの興行師か、それとも本物の魔法使いなのか。幻想の紡ぎ手マキリップの、謎と魔法に満ちた物語。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3810)

久しぶりのマキリップの翻訳本です。最初タイトルを見た時はマキリップが学園物を書いたの?とビックリしたのですが少年少女の成長譚的ないわゆる学園物ではありませんでした。魔法学校は舞台の中心として存在しますが物語の事の始まりがそこにあるという位置付け。オドが創設してから時が流れるうちに権力の都合のいいように変質していき、本質が見失われている時代のお話。「魔法」というものの本質を探る物語です。いかにもマキリップらしい世界観がある物語でした。幻想の世界が美しく立ち上がり、そして煌びやかさのなかにも力強い素朴な精神がある。それぞれのキャラクターたちがとても魅力的。私はアーネス、ミストラル、ヤールがお好みです。


かなり好き系の物語で一気に読んでしまったのですが、少しばかり物足りなさもありました。重層な物語を編むマキリップにしてはかなりシンプルな物語なんですがそれだけに物語の作り方というか構成が荒いなあと。個々のキャラクターの設定が深いのに、使いこなせてないというか。物語を練らないでそのまま一気に書いて途中でいきなり収束させてしまった感がありどこか中途半端。イルスの竪琴シリーズくらいに密に書き込んでくれたらなあ。せめてブレンダンの物語をしっかり書き込んでくれていたらと思わなくもない。ブレンダンの恋人とか弟とか、どうなっているのか教えてほしい。

オドの魔法学校 (創元推理文庫)

オドの魔法学校 (創元推理文庫)