マイケル・フレイン『コペンハーゲン』(劇書房)

芝居で観たい。会話劇なので読むだけでも十分伝わるけど、でも言葉を立体的したほうがより迫ってきそうな脚本でした。


1941年3月、ハイゼンベルクがボーアに会うためにドイツ軍占領下のコペンハーゲンを訪れた「謎の一日」をテーマしたもの。ほぼ実話に基づきつつ「謎の一日」のハイゼンベルクとボーア夫妻の会話を作家マイケル・フレインが様々な解釈で再現。物理学者同士の会話で不確定性原理やら量子力学やら、正直私にはわからない言葉が怒涛のように語られる。だからきちんと把握できたとは言いがたいのだけど、でもこの戯曲は相当面白いです。謎の一日での会話は「原爆開発」についてお互いどう動いたかという部分が核心としてあります。理論と人の心の動き、それがLINKしていく様が見事。戯曲自体が「謎の一日」を不確定性原理に置き換えているんですよね。見方、解釈によって変化し、予測不可能。この戯曲の素敵なところは不確定性原理の「未来は非決定」という部分に未来を感じさせる収束をしていることですね。収束しつつ宇宙へ広がる。

コペンハーゲン (劇書房BEST PLAY SERIES)

コペンハーゲン (劇書房BEST PLAY SERIES)