カズオイシグロ『わたしを離さないで』(早川書房)

ううっ、どんより。カズオイシグロっていつもすっきりしない読後感の小説を書きますが例にたがわず『わたしを離さないで』もそうでした。切ない青春小説という枠組みをこう使うか〜。イシグロさんて結構、意地が悪いとこあるんじゃないのかしら…。人(正しくは人の記憶、意識)は信用ならぬ、な部分が底辺にあるからなあ。この物語、SFの枠組みもあるのですが、後ろ向きな方向。救いがあるようで無いんですね。アメリカ系の作家ならこういう小説にはしなかっただろうねと。イギリスの作家さんだな、という感じ。淡々とすごーくひどいことを描いてるんだけど、それを感じさせない。どこかノスタルジックな美しさがある。ああ、でもすごーくイヤな小説だと思う。でも好きだけど…。こういう小説が好きでいいのかしらとか思います。

わたしを離さないで

わたしを離さないで