毎日新聞の劇評

毎日新聞のサイトがマイクロソフトとの提携をやめて、MSN毎日インタラクティブから毎日jpに変わって、「歌舞伎」のトピックスが無くなった。劇評は芸術・文化の括りのところで載せていくようだ。今月の国立の劇評が載ったので紹介。

歌舞伎:十月歌舞伎公演(国立劇場) 情感豊かで描写細やかな幸四郎
 古典の名作「平家女護島(にょごのしま)−俊寛」と復活上演となる「昔語黄鳥墳(うぐいすづか)−うぐいす塚」の2本立て。

 「平家女護島」は「鬼界ケ島」の前に、俊寛の妻、東屋(あずまや)(高麗蔵)の死の経緯が分かる「六波羅清盛館」を付け、2幕目が「鬼界ケ島(俊寛)」。幸四郎俊寛は情感が豊かで描写が細やかだ。成経(染五郎)と千鳥(芝雀)の祝言を寿(ことほ)ぐ舞いでは、転んでの照れ笑いが次第に境遇を嘆くように変化していく。赦免船を見送る幕切れのぼう然とした姿も印象的だ。

 周囲もそろう。染五郎の成経が初々しく色気があり、千鳥への思いが出た。段四郎の瀬尾は、憎々しさがたっぷり。梅玉の丹左衛門が端正で、芝雀は一途(いちず)さを出した。

 「うぐいす塚」は、大芝居では1929年以来の上演。奈河彰輔監修、国立劇場文芸課補綴(ほてつ)。

 長柄の長者、左衛門(梅玉)の娘、梅ケ枝(宗之助)は、かわいがるウグイスを助けた貧しい青年の源之助(染五郎)に一目ぼれ。腰元、幾代(芝雀)の助けを得て婚礼にこぎ着ける。源之助は婚礼の席で、梅ケ枝の継母、玉木(東蔵)に茶の湯、謡、小鼓、太鼓の試練を与えられるが、難なくこなす。

 源之助は、実は親の敵を探している名家の子息。婚礼では、前場から一転して美しい姿になり、謡などをこなす。染五郎のさっそうとしたところが役にふさわしい。2役で対照的な悪党、大仁坊も演じている。芝雀が忠義者の腰元の感じをよく出した。東蔵にねっとりとした色気があり、宗之助のかれんでおっとりとした風情がいい。27日まで。【小玉祥子

毎日新聞 2007年10月22日 東京夕刊
http://mainichi.jp/enta/art/archive/news/2007/10/20071022dde018040064000c.html