ポール・ドハティー『赤き死の訪れ』(創元推理文庫)

ロンドン塔の城守、ラルフ・ホイットン卿が塔内の居室で殺された。卿は数日前に届いた謎めいた手紙に、異常なほどおびえていたという。その後も、同様に手紙を受けとった卿ゆかりの者たちのもとを、死が相次いで訪れる。それぞれ個人的な悩みを抱えながらも、姿なき殺人者を追うアセルスタン修道士とクランストン検死官のふたり……。クリスマスを控えた極寒のロンドンに展開する、中世謎解きシリーズの傑作第2弾。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3746

中世のロンドンを舞台にした歴史ミステリ。前作『『毒杯の囀り』に続く第二弾。前作は夏場のむせ返るような空気が漂うロンドンでしたが今回は冬の凍てつく寒さに覆われた荒涼としたロンドンが舞台。ロンドン塔での密室もので、一応本格ミステリの体裁はありますが、このシリーズの主眼は1370年代のイギリスを描き出すという部分にあると思います。主人公であるアセルスタン修道士とクランストン検死官というマジメな修道士と酒好き太っちょ検視官コンビが相変わらずいい味を出しております。探偵と助手、という役割ではなく、二人とも「探偵」というコンビなので、この二人の事件に対するスタンスがなかなかに面白い。非常にオーソドックスな語り口なのも良いです。海外本格ミステリ好きにはぜひ手に取っていただきたいです。本筋以外ではクランストン検死官が健啖家ぶりを発揮する食事シーンが楽しみの一つです。出てくる料理が美味しそうなのばかりです(涎)

赤き死の訪れ (創元推理文庫)

赤き死の訪れ (創元推理文庫)