イアン・ランキン『黒と青』感想補足

リーバス警部シリーズ」はイギリス産のハードボイルドミステリで警察小説でもあります。この小説は主人公のキャラ設定や語り口がボイルド系なんですよね。でもあくまでも警察官として動くし、警察内部の動きも重要なポイントとなっている。


警察小説はある意味群像劇となりますので、物語を個人ベースで動かすボイルドとは相性が悪いんじゃないかと思うんですが、そこのバランスがある程度うまくいってる小説かなと思います。でも、感覚的に小説の肌合いとしてはハードボイルドのほうが強いかな。作家がハメットとかチャンドラーが好きで文体をまねているということなので、まあ作家としてもボイルド系として書いてはいるんだとは思います。とはいえ、リーバイス警部はアメリカのハードボイルドの主人公の特徴であるタフガイぶりが随分と違います。タフさが違うというか。やっていることや、肉体的な部分はタフですが精神的にかなり脆い。だからこそ、仲間を必要とする「警官」であることで救われているという感じです。


このシリーズは日本でも好評のようで順調に訳出されています。私は1作目『紐と十字架』と今回の『黒と青』のみの読書。この次、読んでいこうか微妙な位置にある作家です。面白いんだけど、どこかツメが甘いというか、なんとなく物足りなさが…いまのとこツボではない、という感じかな。でも、題材の取り上げ方やら弱いものに弱いというリーバイスのキャラがユニークなのでここで捨てるには惜しい感じも。もう1作品くらいは読んでみるとしましょうか。