レニー・エアース『闇に濁る淵から』(講談社文庫)

レニー・エアース、個人的に待望の新作。前作『夜の闇を待ちながら』はサスペンスミステリとしてかなり秀逸でした。イングランドの牧歌的な田園風景のなかで起こる凄惨な殺人。人物造詣がしっかりしており警察小説としての骨格がありつつ、戦争の傷を引きずる人々の営みが緻密に描かれておりました。そして今回の『闇に濁る淵から』はなんとその前作の『夜の闇を待ちながら』の続編でした。前作が救いのある良い余韻でのラストだったので続編が描かれるとは思ってみませんでした。


やはり舞台はイングランドの田園風景が連なる田舎町。あれから10年、警察を引退したマッデンだったが近所で起こった少女誘拐殺人事件に関わっていくこととなる。前作では第一次大戦での傷が描かれておりましたが今回も戦後の傷を抱えた人々が描かれつつ、刻々と第二次世界大戦が近づいてくるきな臭い空気感を描いた作品でもありました。前作同様、登場人物たちが良く描かれており、かなり悲惨さのある話ですが人の良心というものをまっすぐに描いているのでどこかしらに救いがある。1作目に比べると少々、ストーリー展開はありきたりで先読みが出来てしまうのですがそれでも読み応えがあります。

夜の闇を待ちながら (講談社文庫)

夜の闇を待ちながら (講談社文庫)