八犬伝

夕方からは歌舞伎座で『納涼歌舞伎 第三部』の『南総里見八犬伝』を観劇。楽しいっ!周囲の歌舞伎ファンやら劇評の評判がいまひとつだったので期待してなかったんですが、うそおお、これ面白いよ。これなんであんまり評判良くないんだろう??不思議不思議。かなり楽しいじゃないですか!見所満載。あの長大で枝葉満載の入り組んだ物語『南総里見八犬伝』のエッセンスをうまーく取り出して絵巻物として歌舞伎らしい一場一場見所主義でまとめたエンターテイメントとしての歌舞伎の基本の芝居じゃん〜。楷書中の楷書の歌舞伎だよ、これ。『八犬伝』のエッセンスを歌舞伎のセオリィに丁寧に当てはめて演じるとこうなるという見本のようなお芝居。これが評価されない、ということは「歌舞伎」に今求められてるものが「物語」であり「演劇」になってきているということだろう。物語性を重要視せず、ストーリーのうねりより、場ごとの様式を求めた今回の『南総里見八犬伝』。舞踊を基礎とした動き、様式、固定されたキャラクター、ケレン、舞台美術、等々、歌舞伎というものの基本ラインがほぼ入っている構成でかなりお見事と思ったんですけどねえ。転換の間、多さも気になる構成じゃないと思うし。うーん、まあ新本格ミステリに慣れきってしまった人にアガサ・クリスティエラリー・クイーンを読ませているようなものなのかしらね…。でも楽しいと思うんだけどなあ。


あっ、ちなみに私『南総里見八犬伝』の原作ヲタでございます。ああ、ここはこう変えたのか、とかこのシーンをこう見せたか、とかまあそういう見方をしていたのも楽しめた一因かもしれませんね。最初からあの膨大な伝奇モノを3時間で纏められるとは到底思っていなかったので、絵面を綺麗に上手く見せてくれただけで満足だったりしたのかもしれません。八犬伝ヲタとしては猿之助さんの『八犬伝』も観てますけど、三津五郎さんと猿之助さん、方向性が全然違うなあと思いました。確かに「みせる」という部分ではスピーディさ物語性のダイナミズム等、猿之助さんのほうが吸引力はあるとは思うのですが、私は三津五郎さんの方向性も必要だと思うんですよね。とか、あれえ、色々考え始めてるよ私(笑)まっ、とりあえず詳細感想は後日に!