ロビン・ホブ『真実の帰還』上下(創元FT文庫)

『騎士の息子』『帝王の陰謀』に続く第三部作の最終巻です。『帝王の陰謀』でかなり悲惨な終わり方をしたので、その分この巻で霧が晴れ渡るような大団円を、と思っていた私が甘かった。うわー、これはキツイよ、哀しいよ。救われてほしい人物たちのほとんどが自己犠牲を払う。救いはモリーとブリッジが幸せになったことかなあ。フィッツはとことん救われない。ナイトアイズとの絆、友情はすばらしいけどね。でも彼には人として安らげる愛情には恵まれない、どこかしらでいつも零れ落ちる。もちろん彼のことを皆、愛してはいるけど、それ以上に義務に縛られてしまっている人々で彼の傍らにいることはない。三部作というのでこれで最後だと思ったらファーシーアの一族シリーズはまだ続くらしい。そのなかでフィッツが救われるといいんだけどな。


物語としてはかなり面白かったです。2部まではフィッツの成長譚の趣が強かったのですが後半ファンタジィーとしてのイメージ豊かな重層的な物語として立ち上がっていました。キャラクターそれぞれがかなり活きているし、中世をイメージさせる人々の生活描写も微細に描かれ色彩豊か。「技」「気」「溶解」などのガジェットがうまく回収できていない部分はあれど、これは今後期待。ファンタジー読みなら必読。

真実(ヴェリティ)の帰還 上<ファーシーアの一族> (創元推理文庫)

真実(ヴェリティ)の帰還 上<ファーシーアの一族> (創元推理文庫)

真実(ヴェリティ)の帰還 下<ファーシーアの一族> (創元推理文庫)

真実(ヴェリティ)の帰還 下<ファーシーアの一族> (創元推理文庫)