三月大歌舞伎 昼の部

歌舞伎座『十三代目片岡仁左衛門十三回忌追善 三月大歌舞伎』昼の部を観ました。『吉例寿曽我』は大掛かりな舞台装置の面白さもあり役者も若手〜中堅が揃ってのThe歌舞伎的演目。いかにもな古風な雰囲気がいい。だんまりでは芝雀さんにターゲットオン。大磯の虎がすっかり持ち役になった感がある。それだけの格を見せ、しなやかな色気をみせる。それだけで満足。


吉野山』は意外な拾い物といったところ。正直なところ幸四郎さんの忠信は吉右衛門さん(巡業公演で拝見している)以上にニンじゃないだろうとまったく期待していなかった。でやっぱり、踊りはさほど上手いわけではないし、狐らしい柔らかさもない、愛嬌もないし色気もないし…(ひどい言い様だなっ…をい)。しかし『吉野山』の場を物語ることに重点を置き、静御前との主従関係としての忠信としての役割をきちんとわきまえシンプルに表現し想像していたより良い出来。それになんといってもキメの時の形がやはり見事。踊りがさほど上手くない(失礼!)のにきちんと見せることができるのはこの姿形の美しさがあるからだろう。また福助さんの静御前が美しさとともに白拍子としての色気がいかんなく発揮されなんとも華やかな場になった。


『道明寺』は昼の部一番の目当てでした。前回通しで観た時にかなり面白く拝見していたのでとても期待していたのだけど今回は役者が揃っていたわりに全体的にちょっと薄味。仁左衛門さん、前回のほうが良かったような気がする…。芝翫さんもちょっと調子が良くなさそうで、いつものたっぷりした濃厚なオーラが薄めだったし…。この場だけ上演するのは難しいのかなあ。うーん、うーん。