ジェレミー・ドロンフィールド『サルバドールの復活』上下(創元推理文庫)

ギタリスト、サルバドールと結婚していたリディアが亡くなりその葬儀に出席することになった大学時代のルームメイト四人のなかの残り三人、ベス、オードリー、レイチェルが久しぶりに顔を合わせることとなる。そのうちベスとオードリーはサルバトールの母に招待され城館へと足を踏み入れるのだが…。


一応、ミステリの枠に入るんでしょうが、いわゆるバカミスの範疇でしょうか。バカミスというには文学的ではありますが(笑)。作家が好きなものをあれこれぶちこんでミステリという範囲にまとめてみましたという感じ。枠組みはデュ・モーリアの『レベッカ』のようなゴシックミステリなんですが、そこから外れた部分のほうが面白かったりします。登場人物たちの学生時代を描いたパートの青春小説の部分だったり、いきなり挟み込まれる寓話のようなテキスト部分が非常に楽しい。また本筋から外した部分が饒舌になるにつけ、本筋もなにやらおかしなことになっていきます。そこを楽しめればかなり楽しい本だと思います。どちらかというとノンジャンル系の読書人にオススメかも。


個人的には女四人のやりとりがかなり魅力的でした。一見、ステレオタイプに描いているのかと思いきや、それぞれがきちんとした個性を持つ。彼女らの会話はなんだかとてもリアル感がありました。女同士の微妙な距離感と友情。作家のジェレミー・ドロンフィールドって女性?とか思いましたけど確かイギリス男性なんですよね?