フリア・ナバロ『聖骸布血盟』上下(ランダムハウス講談社文庫)

トリノ大聖堂に実在する、イエス・キリストの遺体を包んだとされる麻布に纏わる含蓄系歴史ミステリー。


工事中のトリノ大聖堂で火災が発生。そこにひとつの焼死体が。その死体には舌がなく、指紋も消されていた。その2年前、聖骸布窃盗を企てた犯人にも同様に舌と指紋がなかった。事件の関連性を疑う美術品特捜部部長マルコは捜査を始める。いったい何者が何をしようとしているのか。


ストーリーは現代の盗難事件のミステリーと古代に遡りキリストが生きている時代から聖骸布の行方がどうなっていったかという歴史物語を交互に描き出していきます。こういう小説は含蓄部分だけでも楽しめるので面白くないってことは無いんですよね。歴史部分はある程度史実を元に構成されていると思うのですが想像力を働かせやすい古代部分が物語としては面白いです。中世、テンプル団あたりになると想像力を働かせる余地がなくなってくるのか、ほとんど歴史的事実の羅列になっていって面白みはなくなっていきます。現代のミステリーのほうは随分と強引な感じですが、捜査する美術品特捜部の面々のキャラ構成がなかなか面白いです。個人的に舌のない男が属する秘密結社が可哀想でなりませんでしたわ。