ジョナサン・キャロル『炎の眠り』

ぼくは呆然としていた。目の前に、30数年前に死んだ男の墓がある。そこに彫られた男の肖像が、なんとぼくそのものだったのだ! そのとき見知らぬ老婆が声をかけてきた。「ここにたどり着くまで、ずいぶん長いことかかったね」捨て児だったぼくは、両親の顔すら知らない。そう、自分が本当はなにものなのかも……。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488547035)

ジョナサン・キャロルの長編四作目。復刊していたので再読。ジョナサン・キャロルらしい現実と幻想の境目での悪夢のような物語。主人ウォーカーの前世が絡んだ自分探し。本当の自分とは?そして本当の父親は?物語を重ねていきそのなかで少しづつ謎解きをしていく面白さがあるダークファンタジィー。しかし今読みと全体的に粗さがあるかな。ちょっとあちこち飛びすぎて散漫な印象で終盤へ至るカタルシスはあまりない。元題材の使い方は上手い。ラストのひねりは怖くていい。

炎の眠り (創元推理文庫 (547‐3))

炎の眠り (創元推理文庫 (547‐3))