アン・ペリー『護りと裏切り』上下(創元推理文庫)

看護婦のヘスターは、友人のイーディスの兄であるカーライアン将軍が置物の甲冑(かっちゅう)の鉾槍(ほこやり)に胸を突かれて死亡したと知らされる。当初は事故だと思っていたが、妻のアレクサンドラが夫殺しで逮捕される。義姉の犯行を信じられないイーディスに相談されたヘスターは、弁護士のラスボーン、元警官のモンクとともに真相を探るが……。(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488295035

ウィリアム・モンクシリーズの第三弾。なんと13年ぶりの邦訳です。ヴィクトリア朝ロンドンを舞台にしたこの物語、前2作が面白かったのですぐに続編が邦訳されるかと思っていたのですがなかなか出版されず諦めていたところでした。これきりに終わらせず次もぜひ訳出していただきたいです。
さて13年ぶりのモンクシリーズ、復習せずにいきなり読んだのはちょっと失敗したかも。主要人物のキャラや関係性をかなり忘れてて把握するのに時間がかかった。この本単体で読んでも大丈夫なようには書かれてはいるのだけどある程度わかってるだけについ思い出そうとしてしまったのがいけなかったかも。さすがに13年のブランクは大きい…。また事件の真相のとっかかりも前半なかなか出てこないのとモンクが仕事中、自分の過去の残像に思考がとっちらかってしまう部分でもなかなか話に乗っていけなかった要因。ただ、個性的な登場人物たちやヴィクトリア朝当時の階層社会での生活や価値観が活き活きと描かれている面白さが作品の吸引力となっており、また事件の真相が一筋縄でいかないものだろうとみえてきたあたりから一気呵成。事件の真相がかなり重苦しくものではあったのだがどうか良い方向へ向かってほしいというこちらの気持ちと相まって後半の法廷シーンはかなりのめりこみながら読みました。前半の積み重ねた描写が後半生きていたと思う。最初は少々んん?と思ったが最終的には読み応えがあり面白かったです。

護りと裏切り 上 (創元推理文庫)

護りと裏切り 上 (創元推理文庫)

護りと裏切り 下 (創元推理文庫)

護りと裏切り 下 (創元推理文庫)