米澤穂信『折れた竜骨』(東京創元社ミステリ・フロンティア)

ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン)」候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年──そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ? 魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488017651

魔法・呪いが存在する12世紀イングランドが舞台のミステリー。ファンタジィもミステリも好きな私にはかなりツボな設定で面白かったです。いくつか読んだ米澤作品のなかで一番好き。まずはファンタジィの側面で世界観がしっかり提示されていてキャラクターが魅力的なのがいい。主役のみならず脇役も個性豊かに描かれそれぞれの物語が読みたくなる。また主人公の成長譚、冒険譚として秀逸。そして「魔法」のなんでもありな世界ながら地に付いた推理ものとしてもきちんとしていてファンタジィ+ミステリ物としてバランスがいい。せっかくだからもっと世界観を突っ込んで書いて欲しいという願いを込めてぜひ続編を!

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)