スティーブン・キング『キャリー』(新潮文庫)

狂信的な母親から精神的圧力を掛けられながら育ったキャリーは変わり者としてハイスクールでもいじめられる存在。自分に自信がないキャリーだがテレキネス能力を持つことを自覚し自我が芽生え始める。そしてその彼女の向けられた悪意や善意という名の無自覚な追い詰めにより悲劇へと向かっていく。
キングの処女長編作、数年ぶりの再読です。久しぶりに再読してみると細かい部分、整合性が欠けていたりして若書きな小説だなという印象はありますが、それ以上に不幸な少女を取り巻く青春小説として秀逸。
今の年齢で読むとキャリーが不幸な環境ながらもごく普通な感覚を要している少女であることがハッキリわかります。昔は書かれている通りに風変わりな少女であったかのように思っていました。また、スーのことはその優等生ぶりに「良い子」という感覚を持っていました。ところが今回、若さゆえの善意的行為が実は無自覚な悪意へと繋がってしまっていることがわかりました。読む年齢や経験によって違った読む方になることを今回痛感しました。
狂信的で高圧的な母に育てられるという家庭環境とハイスクールの友人たちの若さゆえの残酷さの両方に翻弄され感情が爆発していってしまうキャリーが本当に可哀相でなんとも辛い読後感でした。

キャリー (新潮文庫)

キャリー (新潮文庫)