北野勇作『どーなつ』(ハヤカワJA文庫)

父の迎えを待ちながらピンボール・マシンで遊んだデパート屋上の夕暮れ、火星に雨を降らせようとした田宮さんに恋していたころ、そして、どことも知れぬ異星で電気熊に乗りこんで戦った日々……そんな〈おれ〉の想い出には、何かが足りなくて何かが多すぎる。どこかなつかしく、どこかむなしい曖昧な記憶の物語(早川書房http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/20806.html

短編連作です。よくわからないままの戦争、曖昧な記憶、アイデンティティー、「ここはどこで自分は、彼は何者か?」。内容はハードなのにどこかのほほんとした語り口で語られる北野勇作さんらしい物語。日常を日常として受け入れながらも孤独感と寂寥感を感じている「おれ」の物語に切なさとどこか郷愁を感じる。自分にある「記憶」が北野さんの描く世界にも漂っているかのよう。

どーなつ (ハヤカワ文庫 JA Jコレクション)

どーなつ (ハヤカワ文庫 JA Jコレクション)