伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』(河出書房新社)

19世紀末――かつてフランケンシュタイン博士が生み出した、死体より新たな生命「屍者」を生み出す技術は、博士の死後、密かに流出、全ヨーロッパに拡散し、屍者たちが最新技術として日常の労働から戦場にまで普及した世界を迎えていた。後にシャーロック・ホームズの盟友となる男、卒業を間近に控えたロンドン大学医学生ジョン・H・ワトソンは、有能さをかわれて政府の諜報機関に勧誘されエージェントとなり、ある極秘指令が下される。世界はどこへ向かうのか? 生命とは何か? 人の意識とは何か?若きワトソンの冒険が、いま始まる。(河出書房新社http://www.kawade.co.jp/empire/)

円城さんが伊藤計劃さんを悼み、手向けた小説なんだなあと感じた。ワトソンくんが伊藤計劃さんでフライデーが円城塔さんかな。そしてフライデーには伊藤計劃さんが内包される。様々な小説や映画のコラージュでもありその変容が面白い。そしてとても映画的。歴史改変ものとしても面白い。文学や映画の人物たちと実在した人物たちが絡み合う。文学と映画ではわかるのだけでも『名探偵ホームズ』、『ドラキュラ』、『フランケンシュタイン』、『カラマーゾフ』、『007』シリーズ、『風と共に去りぬ』、『地獄の黙示録』など。
テーマやガジェットが昨日観たNODA・MAP『エッグ』と少し重なった。それと最近読んだ北野勇作『かめくん』やマキリップ『アトリックス・ウルフの呪文書』ともLINK。記憶、記録、言葉、戦争。円城さんが伊藤さんの遺稿を受け継ぎ、野田さんがあの芝居を書き、北野さんのかめくんが復刊され、『アトリックス・ウルフの呪文書』が今、翻訳されたのは必然なんだろうなと思った。
主人公のワトソンくんはマーティン・フリーマン、Mはマーク・ゲイティスの若い時に変換して読みました(笑)。この作品、色々と脳内映像化するのも楽しい。そして女性の正体を最初から判ってしまった。なぜピンときたのかわからないんだけど。どこかにヒントあった?(ご指摘があり、リラダン未来のイヴ』を読んでいればおのずと、らしいです。私はこの本は未読なんですがなんとなく知識として頭の片隅にあったのかも。)

屍者の帝国

屍者の帝国