国立大劇場『松鸚会「あーちゃん」』

国立大劇場に染五郎さんの創作舞踊『松鸚会「あーちゃん」』を観に行ったのですが何を書いたらという状況です…。遠征してきた友人と会って食事&お茶したり、劇場では初めてお会いする高麗屋ファンの方たちにご挨拶できたり、いつもの染友に会ったりで、とっても楽しい気分だった。それに染ちゃんの踊りもすごく楽しみだった。
そして幕が上がり染ちゃんらしい創作舞踊が始まった。染ちゃんの渾名が「あーちゃん」。そのあーちゃんの半生をモチーフにしたという踊りやパフォーマンスに観客からは笑い声もあがり最初から湧いていた。染ちゃんの汗が最初から半端なくて疲れてるなかで踊ってるのかな?とふと感じさせたりはしたけどテンポよく勢いよく進んでいく舞台にその懸念は忘れて見入ってた。そして特別ゲスト出演の幸四郎さんが紋付袴で出てらして『勧進帳』の弁慶の延年の舞の後半の踊りを披露。その後、花道すっぽんで下がって引っ込んでいきました。舞台上では『勧進帳』の曲を弾いていた大鼓の菊之丈さんが中央セリで引っ込み、小鼓の染ちゃんはそのまま前へ出て口で附けの音真似をしつつ弁慶の引っ込み部分を演じ始めました。父の弁慶を真似している子供のあーちゃん、それがモチーフの場面だったんだと思います。ノリノリで踊る染ちゃん。そこでコトが起きました。六方を踏むための仕草で後ろへぴょんぴょんと下がった瞬間、染ちゃんはセリへ消えて行きました…。
いったい何が起きたのかわかりませんでした。咄嗟に「えっ?何?演出?えっ?でもでも…」と思っていると裏方さんが舞台に飛び出して奈落をのぞきこみました。それで「あ、落ちたんだ…」と。その後、すぐに緞帳が下ろされ、その裏から聞こえてきた様子は書きたくありません。私は血の気がひき呆然と席で体を震わせていました。体に力が入らない状態でただひたすら染ちゃんの心配をしておりました。友人たちとこのままでは帰れないとある程度の様子がわかるまではと劇場におりました。救急車で運ばれた時は意識があり命に別状はなさそうということまで判りようやく帰宅する気になりました。この日はそれ以上はわからず、ただひたすら染ちゃんの無事を祈るばかり。自分の無力さやヘタレ具合に情けない思いでいました。