マイクル・コナリー『リンカーン弁護士』上下(講談社文庫)

高級車の後部座席を事務所代わりにロサンジェルスを駆け巡り、細かく報酬を稼ぐ刑事弁護士ミッキー・ハラー。収入は苦しく誇れる地位もない。そんな彼に暴行容疑で逮捕された資産家の息子から弁護依頼が舞い込んだ。久々の儲け話に意気込むハラーだが……。(講談社http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2763923)

マイクル・コナリーの新しいシリーズ物です。といってもコナリーの作品はすべて世界が繋がっていますのでこれもそのひとつ。今回の主役は弁護士。タイトルのリンカーンは名前ではなく車のリンカーンの後部座席を事務所として使っている弁護士ということ。彼の名前はミッキー・ハラー。かなりやり手の弁護士のようなのだけど裕福に暮らしているわけではない。一見、「金、金」のような人物だが別れた妻と子との関係に悩み、司法制度の問題や弁護士としての立場に悩むを抱える等身大の男として描かれている。
リーガルサスペンスとしてかなり秀逸。アメリカの司法制度や弁護制度が問題点含めてよくわかる。登場人物も多いしプロットも複雑だけど計算しつくされて緻密なのでリダビリティーがかなり高い。コナリーらしい「正義とはなにか?」の提示の仕方も良い。複雑な構成を見事に収斂させる力量が見事な作家の一人。続編も楽しみ。

リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)

リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)

リンカーン弁護士(下) (講談社文庫)

リンカーン弁護士(下) (講談社文庫)