デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』(ハヤカワポケットミステリ)

ハリーは冴えない中年作家。シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆で何とか食いつないできたが、ガールフレンドには愛想を尽かされ、家庭教師をしている女子高生からも小馬鹿にされる始末。だがそんなハリーに大逆転のチャンスが。かつてニューヨークを震撼させた連続殺人鬼より告白本の執筆を依頼されたのだ。ベストセラー作家になり周囲を見返すために、殺人鬼が服役中の刑務所に面会に向かうのだが……。(早川書房:http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/211845.html)

これは面白い〜。ミステリ好きのみならず「本」好きだったら楽しめると思う。この作家、かなりの書痴だと思うなあ。物語のなかに主人公の作家が書いた作品のさわりが突如として書き込まれているんだけど、その脈絡のない入れ方も面白い。きちんとそれなりないかにもな小説になっているし。本筋のミステリの部分も後半ちょっと書き込みが甘いもののきちんと複線張られてるし、「物語」を読む楽しさに溢れてると思う。何よりキャラが立っているのがいいなあ。特に女性キャラがみんな良い味。主人公はわりとダメんずな感じ(笑)だけど、いかにも文系本好きキャラ。作品にはその作家のすべてあるというがたぶんこの作品はそういう作品。過剰さも詰めの甘さも含めて愛すべき小説。エンタメ系の本が好きな人は皆、読むといいよ。

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)