アン・クリーヴス『野兎を悼む春』(創元推理文庫)

シェトランド署のサンディ刑事は、帰省したウォルセイ島で、祖母ミマの遺体の第一発見者となってしまう。ウサギを狙った銃に誤射されたように見えるその死に、漠然とした疑惑を抱いた上司のペレス警部はサンディとふたりで、彼の親族や近くで遺跡を発掘中の学生らに接触し、事情を探ることに……濃密な人間関係を有する小さな島で起きた死亡事件の真相は?(東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488245078)

『大鴉の啼く冬』、『白夜の惑う夏』に続く、シェトランド島シリーズ第三弾。<シュトランド四重奏>という言い方をするそうでどうやら四巻で完結のようです。『野兎を悼む春』も前二作同様に狭い島のおける閉鎖的な人間関係を緻密に描いていく物語。今回は閉鎖的な人間関係のなかにに遺跡を発掘しにやってきた大学院生と指導教授が絡んでいきます。

シェトランド署のサンディ刑事のウォルセイ島に住む祖母が撃ち殺されてしまう。事故死のようではあるのだが島の複雑な人間関係と外からやってきた学生ハティの複雑な精神状態が絡んで事件の「真実」がどこにあるかが見えなくなっていく。そこでジミー・ペレス警部とサンディ刑事が探っていくこととなるのだが狭い島社会の人間関係を少しづつ紐解いていくうちにウォルセイ島の歴史も絡んで…。

『白夜の惑う夏』では物語が少々薄い感じでしたが今回は登場人物たちの様々な関係性がしっかり描かれ、そのなかでの生活がまた活き活きと描かれているため読み応えがありました。様々な因果に囚われてもがく人とそこから自由に生きる人と。その対比の物哀しさが印象的。

野兎を悼む春 (創元推理文庫)

野兎を悼む春 (創元推理文庫)